建築事業の完成と拡張(1-6節)
ソロモンが主の宮と自分の宮殿を二十年かけて建て終えたとき、ソロモンは、ヒラムが彼に返した町々を建て直し、そこにイスラエル人を住まわせた。ソロモンはハマテ・ツォバに出て行き、これに打ち勝った。彼は荒野にタデモルを建て、倉庫の町々をすべてハマテに建てた。彼はまた、上ベテ・ホロンと下ベテ・ホロンを建てた。これは、城壁と門とかんぬきのある防備の町々であった。さらにバアラテ、およびソロモンが所有するすべての倉庫の町、戦車のためのすべての町、騎兵のための町々、またソロモンがエルサレム、レバノン、および彼の全領地に建てたいと切に願っていたすべてのものを、彼は建てた。 歴代誌 第二 8章1~6節
1節「二十年かけて」(מִקְצֵה עֶשְׂרִים שָׁנָה)
- קֵץ (qets) 「終わり、完成」- 完全な成就を示す
- 神殿建設7年+宮殿建設13年 = 20年
- 奥義 キリストの教会建設も「定められた時の完成」を持つ
2節「ヒラムが返した町々」
- ヘブライ語は הֶעָרִים אֲשֶׁר־נָתַן חוּרָם (ヒラムが与えた町々)
- 列王記では「ソロモンがヒラムに与えた」(I列王9:11)
- この相違は「交換・返還」を示唆
- メシヤ的意味: キリストによる「買い戻し」(redemption)の予型
3-4節「ハマテ・ツォバ」「タデモル」
- צוֹבָה (Tsovah) 北方の戦略的要地
- תַּדְמֹר (Tadmor) 後のパルミラ、荒野の交易路
- 預言的意味: 福音が「荒野」にまで及ぶ(イザヤ35:1)
社会構造と労働配置(7-10節)
イスラエルの出ではない、ヒッタイト人、アモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の生き残りの民すべて、すなわち、この地に残されていた人々、イスラエル人が滅ぼし尽くさなかった人々の子孫に当たる者たちを、ソロモンは苦役に徴用した。今日に至るまで、そうである。しかし、ソロモンはイスラエル人を自分の労働のための奴隷とはしなかった。彼らは戦士であり、彼の補佐官の長であり、戦車隊や騎兵隊の長だったからである。ソロモン王には監督をする長が二百五十人いて、彼らは民を指揮していた。 歴代誌 第二 8章7~10節
7-8節「生き残りの民」(הַנּוֹתָר)
- נוֹתָר (notar) 「残された者、残りの民」
- 七つの民族 ヒッタイト、アモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人
- לְמַס־עֹבֵד (lemas-oved) 「労働の徴用へ」
イスラエルが滅ぼし尽くさなかった民 = 不完全な聖化
しかし彼らは「建設事業」に用いられた
新約の成就 異邦人が「神の家」の建設に加わる(エペソ2:19-22)
パウロ 「私たちは神の同労者」(I コリント3:9)
9節「イスラエル人は奴隷とはしなかった」
וּמִבְּנֵי יִשְׂרָאֵל… לֹא־נָתַן לַעֲבָדִים
「彼の労働のための奴隷とはしなかった」
神学的原理: 贖われた民は「奴隷」ではなく「戦士」「長」
キリストにあって、私たちは「奴隷」ではなく「神の子」(ガラテヤ4:7)。しかし自発的に「キリストの奴隷」となる(ローマ1:1)。教会の指導者は「支配する」のではなく「仕える」者。
聖別の原理(11節)「ファラオの娘」の移動
ソロモンはファラオの娘を、ダビデの町から彼女のために建てた家に連れ上った。「私の妻はイスラエルの王ダビデの家に住んではならない。主の箱が入れられたところは聖だからである」と彼が考えたからである。 歴代誌 第二 8章11節
וְאֶת־בַּת־פַּרְעֹה הֶעֱלָה שְׁלֹמֹה מֵעִיר דָּוִיד לַבַּיִת אֲשֶׁר בָּנָה־לָהּ
「私の妻は…住んではならない」(לֹא־תֵשֵׁב אִשָּׁה לִי)
理由 קֹדֶשׁ הֵמָּה (qodesh hemah) 「それらは聖である」
אֲשֶׁר־בָּאוּ אֲלֵיהֶם אֲרוֹן יְהוָה 「主の箱が来た場所」
聖と俗の区別
- ソロモンは神の聖さを尊重。しかし限界があった。外面的分離だけでは不十分(後に偶像礼拝に)。
- キリストは「聖と俗の壁」を打ち破る(エペソ2:14)方。
教会は「世俗化」を警戒すべき。しかし「分離主義」は答えではない。真の聖化は「内なるキリストの臨在」による。
礼拝制度の確立(12-16節)
それからソロモンは、玄関の前に築いた主の祭壇の上に、主のために全焼のささげ物を献げた。また、モーセの命令どおりに、安息日ごと、新月の祭りごと、年三回の例祭、すなわち、種なしパンの祭り、七週の祭り、仮庵の祭りごとに、日ごとの定めにしたがって献げた。彼は父ダビデの定めにしたがい、祭司たちの組分けを定めてその務めに就かせ、レビ人もその任務に就かせ、日ごとの定めとして、祭司たちの前で賛美と奉仕をさせた。門衛たちも、その組分けにしたがって、それぞれ門に立たせた。神の人ダビデの命令がこうだったからである。彼らは、王がすべてのことにつき、また宝物倉のことについて、祭司たちとレビ人たちに命じたことからそれることはなかった。ソロモンの工事全体は、主の宮の礎を据える日から完成まで確かに遂行され、主の宮は完成した。 歴代誌 第二 8章12~16節
12節「玄関の前の祭壇」
עַל־מִזְבַּח יְהוָה אֲשֶׁר בָּנָה לִפְנֵי הָאוּלָם
「玄関(אוּלָם)の前に建てた主の祭壇」
これは青銅の祭壇(II歴代4:1)
13-14節「モーセの命令どおり」(כְּמִצְוַת מֹשֶׁה)
三大祭り
- 種なしパンの祭り (חַג הַמַּצּוֹת) 過越の贖い
- 七週の祭り (חַג שָׁבֻעוֹת) 聖霊の注ぎ(ペンテコステ)
- 仮庵の祭り (חַג הַסֻּכּוֹת) メシヤ王国の予型
14節の重要性
וַיַּעֲמֵד כְּמִשְׁפַּט דָּוִיד אָבִיו 「父ダビデの定めのように」
- 祭司の組分け (מַחְלְקוֹת הַכֹּהֲנִים)
- レビ人の任務 (וְהַלְוִיִּם עַל־מִשְׁמְרוֹתָם)
大祭司キリストは永遠の祭司職(ヘブル7:24-25)
すべての信者が祭司「王である祭司」(I ペテロ2:9)
絶えざる礼拝「霊とまことによる礼拝」(ヨハネ4:23-24)
国際交易の成功(17-18節)
それから、ソロモンはエドムの地の海岸にあるエツヨン・ゲベルとエイラトへ行った。ヒラムは、自分のしもべたちに託して、船団と海に詳しい水夫たちを彼のもとに送り込んだ。彼らは、ソロモンのしもべたちとともにオフィルへ行き、そこから金四百五十タラントを取って、ソロモン王のもとに運んだ。 歴代誌 第二 8章17~18節
17-18節「エツヨン・ゲベル」「オフィル」
אָז הָלַךְ שְׁלֹמֹה לְעֶצְיוֹן־גֶּבֶר וְאֶל־אֵילַת עַל־שְׂפַת הַיָּם בְּאֶרֶץ אֱדוֹם
地理的・戦略的意義
- 「エツヨン・ゲベル」紅海への出口、アカバ湾
- 「エイラト」現代のエイラート
- 「エドムの地にある」かつての敵地を支配
「海に詳しい水夫」(יֹדְעֵי יָם)
- ヒラム(ツロ)の海洋技術
- イスラエルの資源
- 協力の実 共同事業の祝福
「オフィル」(אוֹפִיר)からの金
- 450タラント = 約15,000kg以上の金
- 列王記では「420タラント」(I列王9:28)
- 数字の違いは写本の誤差または異なる計算法
メシヤ的奥義の解き明かし
①隠されたキリスト
建築者としてのキリスト
- ソロモン 「シャローム(平和)の君」
- キリストは「教会の建築者」(マタイ16:18)
- 「神殿」キリストのからだ(ヨハネ2:19-21)
②諸国民を集めるキリスト
- 生き残りの異邦人が建設に参加
- キリストは「すべての民を引き寄せる」(ヨハネ12:32)
- 「二つのものを一つに」(エペソ2:14-16)
③大祭司としてのキリスト
- ソロモンは礼拝制度を確立
- キリストは「永遠の大祭司」
- 「絶えず生きて執り成し」(ヘブル7:25)
④富を与える王としてのキリスト
- オフィルの金 = 神の栄光と富
- 「キリストの測り知れない富」(エペソ3:8)
- 「神は…豊かに与える」(I テモテ6:17)
グローバリゼーションと神の国
ソロモンの国際交易は、現代のグローバル化を予示
- ツロ(フェニキア)との協力 = 国際協力
- エドムの地の港 = かつての敵との和解
- オフィルへの航海 = 世界宣教の象徴
繁栄の神学の危険性(ソロモンは後に堕落)
- 富は「神の国の建設」に用いられるべき
- 「マモンと神」の両方に仕えることはできない(マタイ6:24)
聖と俗の区別の現代的理解
ファラオの娘の移動(11節)の教訓
ソロモンは聖と俗を区別できなかった
真の聖化は「心の割礼」(ローマ2:29)
誤りを区別する
- 教会が世俗化する
- この世と御国の見分けができない教会
- かと言ってこの世と完全に分離した生活をするのではなく、この世にあってもバビロンの影響を受けない聖さを持つ
聖別された関与 「世にあるが世のものではない」という自覚。
わたしがお願いすることは、あなたが彼らをこの世から取り去ることではなく、悪い者から守ってくださることです。わたしがこの世のものでないように、彼らもこの世のものではありません。真理によって彼らを聖別してください。あなたのみことばは真理です。あなたがわたしを世に遣わされたように、わたしも彼らを世に遣わしました。わたしは彼らのため、わたし自身を聖別します。彼ら自身も真理によって聖別されるためです。 ヨハネの福音書 17章15~19節
日本と東アジアの教会への適応
「荒野のタデモル」(4節)
タデモルは交易路の要所であり、今日の日本の戦略的位置と同じアジアの要所です。
東アジアの福音化における日本の役割
- 「荒野に道を、砂漠に川を」(イザヤ43:19)
- 日本から中国、韓国、東南アジア、中央アジア、インド、イスラム圏への福音宣教の使命
「技術と資源の協力」(18節)
- ヒラムの船とソロモンの資源
- 日本の技術力を神の国のために用いる国際的協力ができる国数少ない国
- 韓国、台湾、フィリピンの教会と協力して「各々の賜物」を用いた相互依存関係を作り、アジア宣教していくヴィジョンを持つ必要があります。
「礼拝の回復」(12-14節)
三大祭りの厳守 = 礼拝中心の教会
日本の教会への適応
- 過越の祭り → 聖餐の回復(毎週または頻繁に)
- ペンテコステ → 聖霊の力の追求
- 仮庵の祭り → キリストの再臨待望の回復
ソロモン王国の頂点 — 千年王国の予型
平和と繁栄の時代
- 諸国民がエルサレムに来る(I列王10章)
- しかし、罪のゆえに最終的に崩壊
メシヤの王国の優越性
- 罪なき王キリスト
- 永遠に続く王国(ダニエル2:44)
- 「新しいエルサレム」(黙示録21章)
「20年」の完成(1節)
- 神の時の完成 = 教会時代の完成
- 「異邦人の完成の時」(ローマ11:25)
- 花嫁の準備が整う時(黙示録19:7)
- その後、キリストの再臨と王国
ソロモンの失敗から学ぶ
- 外面的成功の危険 — 巨大な建築事業だけでは不十分
- 妥協の始まり — ファラオの娘は後の堕落の前兆
- 心の純粋さ — 「初めの愛」を保つ(黙示録2:4)
あなたの人生の「神殿建設」
キリストはあなたを「生ける石」として建て上げる(I ペテロ2:5)
「20年」 完成までの忍耐が必要。今から20年後を絶えず考えてください。
「生き残りの民」の統合
- あなたの過去の罪、失敗も「建設」に用いられる
- 「すべてのことが働いて益となる」(ローマ8:28)
聖別された生活
- 「主の箱」キリストの臨在があなたのうちに
- 外面的分離ではなく、内的聖化を求める
イスラエル人と異邦人が姉妹教会関係を結び、互いに祈り合い、礼拝を中心として交流する時代が来る
礼拝の中心性
- プログラム主義ではなく、礼拝中心の教会
- 「日ごとの定め」の礼拝(13節)
世界宣教の責任
- オフィルへの航海 = 未到達地域への宣教
- 日本の教会は東アジアへの責任を持つ
まとめ
歴代誌第二8章は、ソロモンの栄光の頂点を描きながら、来るべきメシヤ王国の予型を示しています。しかし、ソロモン自身の後の堕落(11章)は、人間の王国の限界を露わにし、罪なきキリストの完全な王国の必要性を指し示しています。現代の教会は、この章から、真の聖化、諸国民の統合、礼拝の中心性、そして終末論的希望を学ぶべきです。

